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無限の可能性を秘めた、ココナッツに迫る――

 

コロナウイルスが世界各地で猛威を振るい、日本国内では大阪や東京などで3度目の緊急事態宣言発令。一向に収束の気配は見えてこない。外出自粛にテレワーク。家に籠る機会、所謂「巣籠」が日常へと変わりつつある昨今。勿論我々も十分にしんどいところではあるが、何より今苦境に立たされているのは飲食店などだ。時短営業に、遠のく常連客。今まで以上に無い脅威が、各店舗を襲っている。
そんな中、あえて「巣籠需要」というニーズに応え、まさに「健康」が重要視される今をココナッツ一筋で挑み続ける企業がある。株式会社ココウェルさん※1 だ。無限の可能性を秘めたココナッツの秘密に、今回は迫る。【2021/04】

 

――ココナッツでセカイを変える。


ココナッツは農村の環境を守り、農家の生活を守り、私たちの健康を守ってくれる、素晴らしい植物です。私たちはココナッツの無限の可能性を追い求め、より多くの方々へココナッツの魅力をお伝えすることが使命です。これからも皆様の健康的な食生活と、ココナッツ農家をはじめとするフィリピンの貧困問題の解決に少しでも貢献していきたいと考えています(抜粋:株式会社ココウェル公式ホームページより)

2004年8月16日設立。本社は大阪府大阪市西区
設立のきっかけは「もっとココナッツの価値を高めることで農村部に産業を創り、農家の人々の安定した生活に少しでも貢献できるのではないか」との想いから。現在はEコマース事業のほか、同市同区北堀江にてココナッツオイルなどを用いた食事が楽しめるcocowell cafeを経営
「日本初のココナッツ専門店」として、日本全国にココナッツ商品を展開している

 

 

01:始まりはスモーキーマウンテンから

今回、我々が取材を申し込んだのは、日本初のココナッツ専門店を運営する株式会社ココウェル(以下、ココウェル)・代表取締役の水井裕さん。
学生時代にスモーキーマウンテンの光景を目の当たりにしたことがココウェル設立の大きなきっかけになったと水井さんは当時を振り返る。
環境問題に興味関心を抱き、環境科学の勉強でフィリピンを訪れ、3R(リデュース:Reduce,リユース:Reuse,リサイクル:Recycle)などの所謂「ゴミ問題」が当時の授業課題ではあったが、危険なゴミ山の中を歩き回る子どもたちを実際に目にし、問題はゴミだけでなく「農村の貧困」にこそ問題があるのでは?と考えた水井さん。

環境も大事ですけれど、貧困に向き合うのも大事だなと感じたんです。農村が貧しく、職を求めて都会に出るも定職に就けず、スモーキーマウンテンの近くに住み着く人々。根本的な問題はやはり農村にあると思うんです。あちこちにココナッツの木が植わっているのにそれが全く活用されていない。だからそんなココナッツを使って何か出来ないか

現地ではアメリカ統治時代の名残もあって、ココナッツ栽培も昔ながらの古い方法で行われていたり、生産者自身がココナッツオイルや砂糖などの作り方を知らないケースも非常に多く、まさに1次産業止まり。何とか6次産業へと繋げたいと、2004年8月にココウェルを設立。日本に初めてココナッツ専門店が誕生した。

 

  【左】今野編集長(左)の取材に応じる水井さん【右】ココウェル設立について熱弁される水井さん (写真撮影:FTSL編集部 takaminn)

 

02:フィリピンのココナッツ事情

フィリピンと言えばバナナ、といったイメージが強いが統計的に見ると意外にも農産物の輸出額ではバナナは2位、ココナッツオイルが1位となっている。またフィリピン国内では全体の約4分の1の農家(約350万人)がココナッツを栽培しており、まさに「ココナッツの楽園」とも言える。しかしながら、農家を取り巻く情勢は厳しい。
1971年から1983年まで続いたマルコス政権下ではココナッツ農家から「より良いココナッツ栽培のため」とココナッツ徴収税が課されるが、実際には政治家の懐を温めていたということが明るみになり、問題となった。また新たに生まれた「ココナッツ保全法:木を政府(ココナッツ庁)の許可なく切ってはいけない法律」により、農家判断で木の伐採が出来なくなったことで逆に生産性が低下。
そこに追い打ちをかけるように広まったコロナウイルス。フィリピンでは中国、イタリアに次ぎ世界で3番目にロックダウン(都市封鎖)を実施。勿論、ココナッツを原材料とする製品製造工場ラインは軒並みストップ。雇用問題にも直面している。
しかしながら、決して悪いことばかりではない。

2015年にココナッツブームがあったんですが、ご存知ですか? 女優のミランダカーが痩せるオイルとして情報発信したことがきっかけとなりアメリカで大ブームとなったんです。またアルツハイマー病に対して効果があるとアメリカの研究者が発表し、翻訳本が日本で出版されたことで日本国内では高齢者を中心に一気に注目度が高まり、前年の5倍の売り上げを達成することが出来ました。また最近ではコロナウイルスやHIVにも効果があるとメディアで報道され、更に注目度が高まっているんです

そう、まさにココナッツに秘められた無限大の可能性に、世間も最近強い興味関心を抱いているのだ。

 

03:ココナッツの無限大の可能性とは

ココウェルが現在力を入れているプレミアムココナッツオイル※2 は、ココナッツ特有の甘い香りがしない無香タイプのオイル。オイルと言えば「酸化」がつきものだが、プレミアムココナッツオイルは飽和脂肪酸が92%と酸化に非常に強く、炒め物や揚げ物に最適だ。コロナウイルスまん延防止施策としてテレワークが推奨され自宅に巣篭る人が増え、家庭内で手料理にチャレンジする人も増えた。巣籠需要と共に今、プレミアムココナッツオイルも注目され始めている。

コロナの件もあってだと思うのですが、健康志向が高まってきています。今後、特に30~40代の女性をターゲットに、プレミアムココナッツオイルを頑張って広めていきたいと考えています」と意気込みを見せる水井さん。だがそれは代表取締役としてではなく、ココナッツに魅せられた「ファンの1人」として、これは本当におススメです!と、推しの商品をお勧め頂いたようにも思えた。

水井さんを虜にするココナッツの可能性は話を聞けば聞くほどに奥深く、非常に興味深い。木は二酸化炭素の吸収量が多く、地球温暖化防止に一役買っているほか、ココナッツから生成されるオイルや砂糖などは人間の身体にとっても良く、炒め物や揚げ物に使えたりドレッシングとして使ったりアイスクリームにかけたりと汎用性も非常に高い。さらには髪の毛や肌の保湿など、美容アイテムとしても使用できるまさに優れものなのだ。

農村の環境や生活、人を守り、私たちの健康を守ってくれる、本当にココナッツは素晴らしい植物だと思います
だからこそ、ココウェルではそんなココナッツや農家を守るための活動に全社を挙げて取り組んでいる。

原材料:ヤシ油
原産国:フィリピン
標準重量 460g / 1,840g
 >ココウェル公式ONLINE SHOPにて購入可能です

乾燥させたココナッツの果肉を圧搾したクッキング用ココナッツオイル
天然の中鎖脂肪酸が豊富で、熱に強いので揚げ物・炒め物に最適で、コレステロールやトランス脂肪酸を全く含まない。一般的なココナッツオイルと違い溶剤等を使うことなく、できる限り栄養素をそのまま残すために天然石灰と活性炭を利用して精製されている

 

【左】ココナッツ商品がずらりと並ぶ店内【右】プレミアムココナッツオイルを手に持つ水井さん (写真撮影:FTSL編集部 takaminn)

 

04:Withコロナ/Withココナッツ/With農家

ココウェルでは、農家を支えることを目的に、“WITH COCO FARMER”プロジェクトを2010年10月より開始。商品の売上金のうち、3ペソ(※フィリピン通貨:2021年4月時点・日本円で約6円)をフェアトレード・プレミアム※3 としてココナッツ農家のために利用される仕組みを構築。“WITH COCO FARMER”プロジェクトの基金は、新たな苗や肥料となる塩の購入などに当てられている。

私達はブランディングというよりも、他のどの企業にも負けないという強い気持ち、必ず売るという強い責任を持っています。ビジネスとしてではなく、これは農家さんへのコミットでもあるんです。だからこそココナッツ一筋でやっている。農家さんからの信頼という点もあります。今後もココナッツ一筋は変わりませんし、ココナッツと聞いてまず先にココウェルを思い浮かべて貰えるように引き続き頑張っていきたいと思います

しかしながらWithコロナの昨今。冒頭でも触れたが、日々刻々と増えていく新規感染者数に、大阪や東京では3度目の緊急事態宣言発令と状況は依然芳しくない。飲食店業はまた更に苦境に立たされている。率直な現在の心境はどうなんだろう。カフェ事業などの売上なども気になるところだ。
しかし水井さんの表情は何処か明るい。

うちは飲食店業というよりは卸売業がメインで、実は売り上げについては去年よりも数字が良いんです。Eコマース事業も安定していて、やはり巣籠需要もあってかオイルなどの売り上げが伸びてきています。ただ一方で、ココウェルカフェについては時短営業や外出自粛の動きなどもあって客足が遠のき、経営的にも厳しい状態です。今後は店を縮小するか、店舗の移動も検討していますが、そういった動きに併せて店内に工房を併設したいなと今考えているところです」工房、ですか。それはどんな?――思わず質問する。

健康志向も高まってきていますし、オフィスや店舗を縮小してそこに新たに工房を併設して料理教室を始めたいなと考えているんです。それからモノづくり体験教室なんかも。勿論私達の工房として利用しそこで生み出されたものをEコマースで取り扱うのも面白いかなと現在模索しているところです」なるほど。確かに面白い取り組みだ。

発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に取引することによる生産者の持続的生活向上を支える仕組みがフェアトレードであるのに対し、フェアトレード・プレミアムは品物代金とは別に支払われるもので、地域の経済的・社会的・環境的開発のために使われる資金のことを指す

 

【左上】“WITH COCO FARMER”の3ペソマーク【中央/右上/左下】ココナッツをふんだんに使ったカフェメニューの数々
【右下】水井さんオススメ、ココナッツの花蜜を蒸留して作られるフィリピンのお酒「ランバノグ」 (写真撮影:FTSL編集部 konchan/takaminn)

05:これからもココナッツと共に

インタビューの最後に、こんな時だからこそチャレンジしたいことはあるか、水井さん訪ねてみた。

そうですね、ココナッツオイルだけでなく、他のココナッツ商品を広めていきたいなと。特にランバノグ。フィリピンのお酒です。花蜜を蒸留して作られるお酒で地元ではよく昔から飲まれています。しかしながらフィリピンではエタノールなんかを混ぜた偽物が多く出回っていて、死者も出ています。個人的には4大スピリッツに加わっても良いと思える程に美味しいお酒なので、どんどん世界に広めたいなと。工房の話もしましたが、それこそ日本でちゃんとしたものを作ってより多くの人に飲んで頂きたいなと考えています」なるほど……ココナッツからお酒まで作り出すことが出来るなんて。恐るべしココナッツ……。

フェアトレードやエシカルという考えも確かに大事ですが、こんな時代です、まず何より自分自身の健康のためにココナッツという選択もありなのではないかと思います。チョコレートやコーヒーなどの嗜好品と違って、ココナッツはどちらかと言うと健康食品、身近で使える、日常の中に取り込めるアイテムです。そして何よりそれが(フェアトレードプレミアムなどを通じて)現地の農家さんの役に立つ。本当に素晴らしい植物だと思います。まだ使ったことが無いという人は、この機会に是非試して頂きたいなと思います」と笑顔で水井さん。
実は自分自身もココナッツ商品を試したことが無く、取材後に早速プレミアムココナッツオイルを購入してその日の夕飯で調理に使ってみたが本当に美味しくて驚いた。もっと早くから取材しておくべきだった。もっと早くからココナッツについて知っておくべきだったと感じるほどだった。

水井さん率いるココウェルは今日も明日もココナッツと共にWithコロナの時代を切り開き進んでいく。
どんな味なのか、気になるということであればカフェへ足を運んでみるのも良いかもしれない。ココナッツをふんだんに使ったカフェメニューを堪能した後にじっくり店内の商品を見て回るのも十分に楽しい。是非Withコロナの時代をWithココナッツで乗り切って頂きたい。
――その先に明るい未来が待っていることを切に願って。

 

インタビュー出演:
水井 裕さん

株式会社ココウェル
代表取締役

 

@写真撮影・取材:FTSL編集部 konchan/takaminn